踊る人形の暗号解読はキャラ名に左右される?(前編)

歌舞伎町シャーロック17話は「踊る人形」ネタだった。

5ちゃんねるのアニメ板を眺めていると概略以下のような批判の書き込みがあった。

 

http://rosie.5ch.net/test/read.cgi/anime/1580140791/

・原典は暗号文が結構長くて普通の文章構成になっているのにアニメではあんな落書き程度の短文で解読なんかできるわけない

・原作リスペクトがない

 

そうなのだろうか?

私は以前からこの暗号に「あれれー?」と思っていた点があった。

原典でも読者に提示されている暗号文はかなり短文だ。しかもその暗号文の中では登場キャラクターの名前の比率が結構大きいのだ。

つまり暗号文中の文字の出現頻度はキャラクター名に左右されているのでは?もっと言えば作者コナン・ドイルがキャラクター名を適切に設定したからこそホームズは暗号を解読できたのでは?

大袈裟に言っちゃえばこれはご都合設定ではないのか!?(もちろん冗談だよ。原作を批判する意図は一切ない。)

 

ここで原作に現れる暗号文(復号したもの)を時系列順にすべて書き出してみる。

 

https://en.wikisource.org/wiki/The_Return_of_Sherlock_Holmes,_1905_edition/Chapter_3

1. AM HERE ABE SLANEY

2. AT ELRIGES

3. COME ELSIE

4. NEVER

5. ELSIE PREPARE TO MEET THY GOD

6. COME HERE AT ONCE

 

ホームズは1〜4の暗号文でほぼ暗号を解読し、5番目の脅迫文を見た際にはすぐに犯人捕獲の行動に出た。

6番目は犯人を誘き出すため、逆にホームズが作成した暗号文である。

 

注) なお厳密には謎解き場面で次のような記述がある。

原文: "On examination I found that such a combination formed the termination of the message which was three times repeated."

拙訳: 「確認してみると、このような組み合わせ (="ELSIE")が文末に三度も現れていた。」

ところが読者に提示された上記暗号文にそのようなものはない。ホームズは読者の知らない暗号文を入手しているようである。私の見落としなのかな?

 

それはともかく解読に使用した1〜4の暗号文は全部でわずか38文字。

しかもその中で"ABE SLANEY"、"ELRIGES"、"ELSIE"の21文字分は人名または地名である。つまり暗号文の半分以上(21/38)は自然な英文ではなく、作者が任意に設定した人名、地名なのだ。

 

作中では英語の文章で最もよく使われる文字が"E"である事を根拠に推理が構築される。

ホームズはまず1つめの"AM HERE ABE SLANEY"の暗号から、「15文字中最多の4つ使われている文字がある。これがEだろう。」と推測したのだが、もし"ABE SLANEY"というキャラを"ISAAC SLANEY"と言う名前にしていたら最多の文字は"A"となり、ホームズは本来"A"である文字を"E"であると読み間違えてしまっていただろう。

 

つまり、踊る人形の暗号解読は作者が設定した人名、地名に左右されるのである。

 

ところが作者が設定した上記三つの人名地名の中にそれぞれ"E"が2つづつ使われている。これはホームズに暗号を解かせるための"E"の水増しではないだろうか!?

 

後編に続く。